★上京

上京した彼女は新聞配達店で定められた4畳半一間のアパートに住み込み、東京での生活を始める。

「働いて自活するというのは、全然苦じゃなかったんですよ。新聞配達は多少辛かったけど、一番大変だったのは電話でした。一週間も電話しないと、向こうから大家さんの所にかかってきて、約束も守れないんだったらもう帰ってこいといわれて」

しかしもちろん、そんなことで帰る彼女ではない。新聞配達だけでは自活できないのでさらにアルバイトを重ね、もちろん上京の目的である歌手を目指すべく、ヴォイス・トレーニングに通い、踊りや芝居のスクールにも通い始める。そんな彼女の1日は、新聞配達に始まり、終わると夕方までバイト。それからレッスンに通い、終わるとまた終電までバイト。かなりハードな日々だが、それでも実家に帰ろうとは思わなかった。

「帰ったら父親のいいなりになって、私じゃなくなると思ってましたから。やっぱり自分のやりたいことをやって、女でも自立できるんだっていうところを見せたかったですし、 どうせやるんだったら、1枚ぐらいレコードを出さなきゃって思ってました」