★思春期

そういう気持ちが芽生え始めていた頃に、テレビでたまたま「津軽海峡冬景色」を歌う石川さゆりさんを目にし、彼女の中に「将来は歌手に」という夢が膨らみ始め、それがまた”家を出たい”という思いに拍車をかけることになった。
が、父親はおいそれと許してくれるわけがない。どうしても許しが出なかった時は家出をしてでもと思いつめた彼女は、お小遣いをため、アルバイトをし、着々と”その日”のための準備を始める。
が、もちろん許してもらえるに越したことはなく、彼女は一方で詩吟も続け、中学高校時代は父の機嫌のいい頃合いを見計らっては、説得し続けるという日々を過ごす。やがて家族も彼女の味方になり、家族ぐるみの説得に、さすがの父親も折れる。

「結局、条件付きで許してもらったんです。その条件飲むんだったら、行ってもいいぞと。それで2年間やってみて、ダメだったら帰って来いと」

その条件とは、自活すること、新聞配達をすること、毎日実家に電話をすることの3つ。かなりキツイ条件だと思うが、それでも彼女は喜々として単身上京する。